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exhibition
ザ・エキシビション
今回のエキシビションは、イタリアの伝統芸術から得たテーマやインスピレーションに触れながら、ブチェラッティの軌跡を辿る旅へと誘います。時代を超越した傑作がどのように生まれたのか、数世代に渡る職人技がどのように受け継がれたのか、クラシックの世界をどのように現代で再解釈してきたのか。その秘密を紐解きましょう。
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ルーム I
ブチェラッティ・ジェネレーション
過去の世代から次世代へ。時代を超えて芸術に命を吹き込むブチェラッティの金細工の技法は、常に変化し、進化し続けます。
永遠に進化し続けるメゾンの魂、デザイン画
“「私は父から技術や技法の秘密、美学の礎を受け継ぎました。そして今度はその全てを子供たちにバトンとして渡したのです。」ジャンマリア・ブチェラッティ” Gianmaria Buccellati
メタモルフォーゼ(変身)を象徴する優美で繊細な蝶の羽を通して、1919年から現在に至るまでの美の価値観を塗り替えてきたブチェラッティ一族の代々のスタイルの変遷を辿りましょう。
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メゾンのストーリー
Mario Buccellati
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Gianmaria Buccellati
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Andrea Buccellati
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Andrea and Lucrezia Buccellati
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ルーム II
職人技による奇跡
ブチェラッティの作品におけるインスピレーション源
「オブジェクトは想像力と芸術の融合によって誕生するが、あらゆる創造の源は、記憶、回想、そして夢がなければ生まれない」ジャンマリア・ブチェラッティ Gianmaria Buccellati
シガレットケース、財布、ボックス、小物類。マリオとジャンマリアは、テキスタイルの希少価値は言うまでもなく、幾何学的な装飾や複雑なルネサンス建築からインスピレーションを得ながら、手のひらに収まる傑作の制作に挑戦しました。
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ルーム III
自然の驚異
自然が誇る多様性、活力、調和は、ブチェラッティのシルバーラインにおける宇宙のようなインスピレーション源です。
心を揺さぶるミューズである自然
「銀細工はパンをこねるのと同じ。手をかければかけるほど、美しくなる」マリオ・ブチェラッティ. Mario Buccellati
ブチェラッティの際立った芸術性は、シルバーの世界でも明らかです。波形の貝殻、木の葉、花のつぼみ、完熟の果実、毛並みのある動物たち。自然界のモチーフがテーブルウェアや燭台、センターピースを豊かに飾ります。
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インスピレーションの発見
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ルーム IIII
アイコン・ギャラリー
美、創造性、サヴォアフェールが集う場所で、伝統の技術により時代を超越した傑作が誕生します。
"「サヴォアフェールは一日で生まれるものではなく、地道な努力を通して養うものです。私たちのDNAには、時代を超越した美を創造することが組み込まれています」アンドレア・ブチェラッティ" Andrea Buccellati
このギャラリーでは、マリオ、ジャンマリア、フェデリコ、アンドレア、ルクレツィアによるメゾンのアイコンを、美と創造性に関する架空の対話の中で紹介していきます。
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レース
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ハニカム
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エングレービング
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エンチェーニング
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オンベリカーリ
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エターナル
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カクテル リング
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カクテル イヤリング
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フラワー&アニマル
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マクリ
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ハワイ&エトワレ
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オペラ
the princeof goldsmiths
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Andrea and LucreziaBuccellati
ブチェラッティには現在、次世代のクリエイティブ・リーダーとして米国でメゾンアンバサダーを務める娘のルクレツィアが加わりました。彼女はブチェラッティデザイナーの4代目として活躍しています。
新しいデザインについて話し合うアンドレアとルクレツィア
ルクレツィアはメゾンのアーティスティック部門に参加することを自身の使命とし、2013年以来父と肩を並べながらブチェラッティ・スタイルの再解釈に取り組んでいます。ルクレツィアは、ミレニアム時代の女性らしさや美学を背景に、フォルムと着け心地の両方の観点から作品制作に取り組み、現代を生きる女性像を体現しています。
2023年にデザインされた展示品の蝶は、父と娘の見事な共同作業によるもので、ブチェラッティの未来を垣間見せる逸品です。チュールをサンバースト模様に加工し縁を型押ししており、伝統を踏まえながらも技術的な進化を強く感じさせます。羽に並列にあしらわれたバゲットカットのダイヤモンドと、胴体のティアドロップカットのダイヤモンドは、現代性を体現しています。希少性と美のバランスが完璧に調和する作品となりました。
AndreaBuccellati
軽やかさ、そして現代的なエレガンスを洗練された技術で表現することで知られるアンドレアは、ブチェラッティ・スタイルにモダンのエッセンスを加え、昇華させる役割を果たしました。
工房でモザイコ・コレクションのネックレスのデザインを描くアンドレア・ブチェラッティ。
アンドレアは、16歳の若さでミラノの工房で父と共に働き始め、現在はメゾンのクリエイティブディレクター兼名誉会長を務めています。アンドレアも、ブチェラッティ・ファミリーの中で頭角を示し、当初からデザインにおいて突出したポテンシャルを発揮していました。美術史、特にルネサンス美術への造詣が深いアンドレアは、均整の取れたプロポーションによるシンメトリーな美を構築することに長けており、ブチェラッティのスタイルに現代的な美学を取り入れた貢献者として知られています。
1995年にデザインされた蝶は、父のバロック様式の豪華絢爛さから脱却しつつも、伝統への敬意を見事なまでに表現した作品となっています。繊細で軽やかなチュールの羽にはダイヤモンドのみがあしらわれており、そこに色彩は存在しません。一方胴体にはバロックパールがあしらわれ、その唯一無二の形が透明感溢れる羽の中で際立っています。
GianmariaBuccellati
5人兄弟の4番目として生まれたジャンマリアは、父親の跡を継いだ最初の息子であり、幼い頃から芸術とデッサンの才能を発揮していました。
工房で仕事をするジャンマリア・ブチェラッティ(1980年代) © Maria Mulas
1929年にミラノで生まれたジャンマリアは、14歳の頃からブティックや工房で働き始め、金細工の技術を職人から直に学びました。アーティストと経営者、どちらの先見の明も持つジャンマリアは、商業的観点から芸術的観点まですべてに目を配っていました。
今回展示される1993年デザインの蝶は、ジャンマリアのスタイルが父親のそれとは異なる方向へ進化したことを明確に示しています。ジャンマリアは、1970年代ならではの豊かな色彩使いに加え、1980年代のゴージャスさを完璧に捉えていました。この作品の蝶の羽は交互に配色されたゴールドと複雑なエングレービング、丁寧に配置されたダイヤモンド、色とりどりのエメラルド、ルビー、パールで表現され、ジャンマリアの卓越した芸術性を如実に表す逸品となっています。
MarioBuccellati
このストーリーは、先見の明と鋭い観察力を兼ね備えたメゾンの創設者、マリオ・ブチェラッティから始まります。マリオは早くから「ミラネーゼらしさ」というものを理解しており、後に金細工界における代表的な表現者として知られるようになります。
工房で仕事をするマリオ・ブチェラッティ(1960年代)
1891年にアンコーナで生まれ、父の死後すぐにミラノに移り住むことになったマリオはミラノ中心部、スカラ座にほど近いサンタ・マルゲリータ通り5番地にある老舗の金細工店で見習いをすることになりました。1919年、マリオは稼業を受け継ぎ、メゾン・ブチェラッティを創設しました。この間マリオは1000年もの歴史を持つ金細工の技術や素材、職人の管理方法などを習得しましたが、それ以上に重要だったのはお客様の嗜好に対する洞察力を身につけることでした。
1950年代に作られたこの手作業による蝶は、「ecellentissimo orafo(熟練の彫金師)」とガブリエレ・ダヌンツィオに呼ばれていたマリオの仕事を見事に体現した作品です。バロック・パール2個を使用して作られた繊細な蝶の胴体からは微細な穴のあいたホワイトゴールドの羽が生え、ローズカットのダイヤモンドが透明感を露のように引き立てています。蝶のルビーの目が見る人を惹きつけ、さらに近づくと脚や触角に精密な彫刻が施されているのがじかに見えます。
建築
ブチェラッティは歴史に裏付けられた芸術に深い愛情を注ぎ、絶え間ないインスピレーションを得ながら、時代を超越する逸品やジュエリーを生み出し続けています。
Telato(テラート)ボックスの裏にはマリオ・ブチェラッティの工房でエングレービングが行われたことを示す「Engraved in Mario Buccellati's workshop」のサインがあります。
ローマからビザンチンへ、フランスのゴシックからフィレンツェのルネサンスへ、ヴェネツィアのバロックからロココへ、そしてロマン主義から新古典主義へ。芸術は、ブチェラッティの作品とスタイルに深く組み込まれたゆらがないモデルであり、創作の鍵となる不動のインスピレーション源です。確かな技術に裏付けされた芸術から得たインスピレーションを融合させることで、名だたる建築物のように美観と機能性の共生を完璧に実現します。
ジャンマリア・ブチェラッティが2001年にデザインしたシルバーとイエローゴールドの豪華なテーブルボックスは、そんな共生を体現しています。パリのノートルダム寺院のパノラマを描いた美しいエングレービングが特徴的なこのボックスは、芸術的でありながら機能的にも優れています。その制作工程は、細部に至るまで精緻を極めています。職人はリファレンスシートを使ってグリッドをトレースし、エングレービングを施します。こうして、見るものを魅了する美しく優雅な作品が生まれるのです。
美
美への飽くなき探求心により、ブチェラッティは社交の場に映えバンケットにふさわしいオブジェクトを制作しました。
ラメとチュール素材のイブニングバッグ。ルビーがあしらわれたシルバーのクラスプ(1930年代)。ブチェラッティ・ヒストリカルコレクション
1930年代、この柔らかな生地のハンドバッグは社交の場で絶大な人気を博しました。マリオ・ブチェラッティは、留め具を単なる機能的パーツからジュエリーのような装飾的オブジェクトへ変容させました。
1950年代、マリオは当時人気だったしっかりとしたハンドバッグを、そのまま模倣することはしませんでした。それでも米国発の新しい流行に順応し、エングレービングという独自の技法を取り入れ差別化したのです。この技法は、ダマスク織のシルク地のように視覚的に柔らかい印象をもたらします。
1964年製の長方形のオブジェクトは、「telato(テラート)」と呼ばれるエングレービングが施されているシルバー製です。イエローゴールドのロゼット部分には「modellato(モデラート)」と呼ばれるエングレービングが施されており、ブルーサファイアとピンクサファイアが交互にあしらわれています。小物としての実用性とジュエリーの華やかさを融合させた、見事な傑作です。
詩
詩人、作家、劇作家として評価の高いガブリエーレ・ダンヌンツィオとの出会いは、マリオ・ブチェッラッティの美的感覚や芸術的教養を底上げし、ジュエラーとしての学びの過程において絶大な役割を果たすものとなりました。
マリオ・ブチェラッティに捧げられたガブリエーレ・ダンヌンツィオの肖像(1934年3月18日)
初めて二人が出会ったのは、1922年8月2日。ある日サンタ・マルゲリータ通りを散歩していたガブリエーレはブチェッラッティの店の前で足を止め、その見事なデザインに魅了されました。その日以来ガブリエーレはマリオ・ブチェッラッティに何百もの高価な作品の制作を依頼するようになります。現在ではブチェッラッティ・アーカイブに収蔵されている1922年~1936年の間に交わされた83通の手紙によって証明されるように、彼らは絶え間なく文通を続けていました。
数え切れないほどの作品の中で、特筆したいのは1934年に作られたこの美しいマッチホルダーです。シルバーの表面に施された華麗な彫刻と「Ardentior Intus」(内で燃える炎)の刻印が調和し、詩人らしいアイロニーを感じさせます。ガブリエーレは1924年にヴィットーリオ・エマヌエーレ3世からモンテネヴォーゾ公の称号を授けられており、前面の青と赤のエナメルはダンヌンツィオ家の紋章の色を想起させるものです。
幾何学模様
教会建築やルネサンス様式からインスピレーションを得た形状が相互に作用しあい、芸術性と計算性が融合したブチェラッティの幾何学的なデザインは、常に私たちを魅了し続けています。
「Tre」例:ヴィスコンティ・スフォルツァ家の紋章である太陽
メゾンの様々なコレクションで見られる幾何学模様は、ブチェラッティ・スタイルの大切な構成要素のひとつです。これらは、装飾的なフリーズやモザイクの床、複雑な彫刻から着想を得ています。
ブチェラッティアーカイブには、「Tre(トレ)」として知られる、他に類のない小さな紙のシリーズが保存されています。ほとんどコピーされたかのように見えるその紙には、職人がボックスや小物に丹念に彫り込んだ幾何学模様や花模様がいくつも描かれています。様々なモチーフの中でも、特に目を引くのはミラノ公爵ヴィスコンティ・スフォルツァ家の紋章である太陽と、マントヴァのドゥカーレ宮殿の迷宮のような天井でしょう。
展示品の1930年代のシガレットケースは、表面のシルバーに彫られた完璧な幾何学モチーフが特徴で、ルネサンス芸術における最も暗示的なパターンを彷彿とさせます。
花と葉
アリストテレスの言葉のように、ブチェッラッティにとっても「すべての自然には、素晴らしさが存在」します。
The Floral Offeringのイラスト、Philadelphia Carey and Hartより(1847年)
銀細工師として活動を始めたマリオは、当時の主流であったフォルムに心を動かされることはありませんでした。その代わりに、独創的かつ革新的なオブジェを独自に開発していくようになりました。
現在に至るまで、専門の職人たちが数々の逸品の鍛造・成形を続けています。こうしたオブジェは、主にハーバリウムで見られるような写実的な葉や花など自然のレパートリーからインスピレーションを得ています。
ジャンマリアの長男であるジノ・ブチェッラッティは、メゾンのアイコニックなシルバーオブジェの数々を生み出しました。エレガントで洗練されたボウルやトレーで知られるNatura(ナチュラ)コレクションに登場する葉や花のモチーフも同様で、繊細な花びらや葉脈を細部まで表現されています。これらの創作が、やがてブチェラッティのスタイルを世界に広めることになります。
地球の驚異
自然には、植物だけではなく珍しいジェムストーンなど、様々な素材が存在します。これらは、地球が私たちに与えてくれる贈り物なのです。
スターリングシルバーとムラーノガラスのキノコ型プレースホルダー。ムラーノ コレクション
鬱蒼と生い茂る緑の中に隠れているのは、優雅な毛並みを持つ動物たちです。 ジャンマリア・ブチェラッティは、ファーリー技術を使用して彼らの毛並みを再現することに成功し、非常にリアルなオブジェへと転生させました。 60 年代から使用されているこの技術は、長さと太さが異なる無数の銀のフィラメントを目に見えないように溶接し、動物たちの毛並みを模倣します。
職人は、まず銀のシートを特殊なはさみでほぐし毛皮のパーツを作った後、粘土で動物の模型を作りそれを使って金属の型を成形します。そして型の内側に摩耗した銀のシートを貼り、その2つを溶接して動物の体を作るのです。
ブチェラッティの熟練した職人技が、このように細部に至るまで驚異的なリアリズムの表現を実現し、リス、子鹿、アヒル、フクロウといった動物たちを銀細工として転生させます。
海の驚異
ブチェラッティには、海の世界を彫刻的なフォルムで豊かに表現しているコレクションが存在します。
アイコニックなタツノオトシゴのセンターピース(シルバー製)1970年代の広告に登場。
ジャンマリアとアンドレアは、珊瑚細工の目を持つカニ、長い触角を持つロブスター、貝殻に乗るタコなど、海に生きる命をシルバーで豊かに表現しました。
また、テングガイやオウムガイなど、本物の貝殻をシルバーでコーティングした作品も存在します。これら海のモチーフは、繁栄、再生、豊穣のシンボルとして、その神秘的且つ優美なシルエットで人々を常に魅了してきました。
1970年代の遊び心のある広告シリーズでは、深海にインスパイアされたシルバーピースが使われています。
この高度な技法では、シートにピアス技法で穴を開け、幾何学模様や葉のような格子模様を作り、そこにジェムストーンを配置します。
アンドレアが2022年にデザインしたモザイコ コレクション。チュール技法で作られ、9個のカシミールサファイア(計34.87ct)がセットされています。
金細工職人は1カ月以上もの時間をかけてゴールドを切り出し、ジェムストーンを加工してブチェラッティ独自の幻想的な軽やかさを実現しています。このプロセスは非常に複雑で、熟練した技術と極めて高い精度が要求されます。
マリオ・ブチェラッティの名声と称賛を世界的なレベルまで押し上げたのはチュール(レース)技法です。マリオは当初から、ブラーノ針を使用したヴェネチアの刺繍にインスピレーションを受け、複雑なピアス技法でそのパターンを写し取りました。
初期の代表作に1920年代製作の華麗なワインディングブレスレットがあります。ゴールドの裏地が施されたシルバー製で、4つのメダイヨンには1264個のローズカットダイヤモンド(15.0ct)と192個の8角形ダイヤモンド(5.20ct)が交互にあしらわれています。イエローゴールドのベゼルには「modellato(モデラート)」と呼ばれるエングレービングが施され、4個のオールドカットダイヤモンド(4.00ct)の輝きをより引き立てています。エレガントで柔らかく、「ミラネーゼらしさ」を感じる傑作です。
「ハニカム」としても知られるこのプロセスでは、小さな多角形の穴が連結するように糸鋸ででシートに穴を開けます。
ダイヤモンドをあしらったホワイトゴールドとイエローゴールドのチュール パリージ ペンダントイヤリング。イコナ コレクション
その制作工程は、職人がゴールドのプレートの表面にデザインをトレースすることから始まります。次に、印がつけられた隙間を手作業で慎重に穴を開け、六角形や五角形など、それぞれのセルを職人が希望の形に仕上げます。チュール状のデザインと規則性を完璧なものにするため、各セルは少なくとも5回は精錬する必要があります。
ジャンマリア・ブチェラッティのペンダントイヤリングはこの技法を独自に解釈したもので、ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿の多角形状の装飾をオマージュしています。ティアドロップのエッジ部分が、2つのホワイトゴールドの花のシルエットを包み込み、イエローゴールドの繊細な格子模様の中央で咲いています。659個ものブリリアントカットのダイヤモンド(6.54カラット)が放つ光は、透し彫りの軽やかさをさらに際立たせています。ブチェラッティならではの異なるゴールドが交互に配色されるデザインで、より際立ったコントラストを生み出しています。
マリオ・ブチェラッティとその後継者たちは、ルネサンス期の職人にヒントを得てエングレービングをメゾンに取り入れました。
1950年代を象徴する広告:卓越したエングレービング技術から、マリオ・ブチェッラッティはベンヴェヌート・チェッリーニとよく比較されます。
この技法はブチェラッティのスタイルを象徴する5つの独創的かつユニークな細工「リガート」、「テラート」、「セグリナート」、「オルナート」、「モデラート」へと発展しました。
今日の金細工界におけるエングレービングは機械で行われていますが、ブチェラッティは手作業によるエングレービングを変わらず続けています。そして、職人の腕前が作品の品質を決定づけます。
そのことについて、アンドレア・ブチェラッティはこう語っています。「手作業によるエングレービングはコストがかかるため、この60年間でほとんどのメゾンから失われました。しかし、私たちにとっては職人技の質の高さを示す代名詞であり、今でもその技法を維持する努力をしています。」
ルネサンス期から続くこのエングレービング技法は、特にカフブレスレットで高い評価を受けています。ビュランという道具を使用してゴールドの表面に細やかな平行線を何本も並べる「リガート」技法は、上質なシルクのような質感と輝きをジュエリーで実現します。
エンチェーニングとは、作品の構成要素を鎖のように結合させることを指し、これによって柔軟性が大いに増します。
マリオ・ブチェラッティがデザインしたフレキシブルブレスレットの裏側(1920年代)数多くの小さなリングが「オルナート」のエレメンツをつなぎあわせています。
この技法には、人間工学に加えエンジニアと同様の技術が求められます。一族のクリエイティブメンバーとメゾンの職人たちは、輪の形状を研究して構成要素を小型化することで、柔らかい布地のように身につける人の体に沿う作品を生み出しました。
マリオはこの技術を活かし、ゴールドの裏地が施された有名なシルバーブレスレットを発表。ジャンマリアとアンドレアもこの技術を活用し、ビブネックレスのように優雅で柔らかく、着け心地の良い作品を生み出しました。ジャンマリアが1992年に発表したネックレス、ペンダントイヤリング、フレキシブルブレスレットのシリーズは、巧みな技法と美学を融合させながら、慎重に研究を重ね幻想的な軽やかさと透明性を実現したものです。
1920年代、なめらかで曲線的なシルエットを演出するソートワールネックレスの人気は絶大でした。社会における女性の役割が大きく変化し、女性の社会的・文化的解放の皮切りとなった時代でした。
2021年、「オンベリカーリ」コレクション発表のために撮影されたシルバーと水晶のネックレス。
トレンドに敏感だったガブリエーレ・ダンヌンツィオは、ペンダントが女性の臍部分に優雅に垂れるタイプのソトワールネックレス、「オンベリカーリ」をマリオにオーダーしました。ガブリエーレはエレオノーラ・ドゥーゼ、イダ・ルビンシュタイン、エレナ・サングロ、マルケッサ・カサティ・スタンパなど自身のミューズたちにそのネックレスを贈りました。
展示されている貴重なオンベリカーリのネックレスは、1930年代にマリオがデザインしたものです。繊細な細工が施されたイエローゴールドのカップと、細いシルバーのチェーンがバロックパールの長いストランドをつないでいます。ペンダント部分は葉のモチーフとシルバーのドロップ構造が印象的で、99個ものバロックパールが目を惹きます。(200.0ct)。
現在オンベリカーリのネックレスはアンドレアによって新解釈され、モダンに生まれ変わっています。ラベンダーカラーの翡翠のネックレスは繊細なエングレービング「リガート」が施されています。グレーパールが美しいバージョンは、ルネサンス期の肖像画のミューズが纏っているようなデザインです。
ブチェラッティは、ジュエリーのスタイルを確立しただけに留まらず、「エターナル」リングなど新しい金細工のジャンルを考案しています。
ダイヤモンドをあしらったイエローゴールドとホワイトゴールドのバリエーションのエターナル。チュール パリとニュー チュール。イコナ コレクション
このリングは、エタニティサークルのように終わりのない愛を象徴したものです。マリオが1940年代にこの言葉を考案し、エンゲージリングやマリッジリングを表す言葉として世界中に広めました。
ブチェラッティのエターナルリングは、これまでさまざまな装飾モチーフで表現されてきました。マリオのデザインは光沢あるホワイトゴールドを蔓に見立てたデザインです。
ジャンマリアは、ペルシャ絨毯を彷彿させる幾何学模様をダイヤモンドのモチーフとして取り入れました。
「パリ チュール」は高級なテキスタイルからインスピレーションを得ており、繊細なハニカムの透かし彫りと、ブロケードの縁取りが施さています。
このタイプのリングはジャクリーン・ケネディやフランク・シナトラなど、ファッションリーダーやハリウッドセレブの間で高い人気を博しました。
カクテルリングはブチェラッティのスタイルに繰り返し登場すします。 大ぶりでカラフル、貴重でフォルムの多様性に富んだカクテルリングは、1930年代にマリオによってすでに人気を得ていましたが、1950年代から1960年代にかけてジャンマリアの手により、象徴的な存在へと昇華されました。
アンドレア・ブチェラッティがデザインしたムゾーネリング(2015年)サファイアとダイヤモンドがセットされています。カクテル コレクション
ジャンマリアの直感から、丸みを帯びたドーム型の「ボトレッタ」、鱗のようなヘッドとシャンクの「ムゾーネ」、「パゴダ」などのリングの形状が研究されたのです。後者は、東洋とその建築へのオマージュとして、そして香港と日本で定期的に開催されていた展示会で成功を収めたことを背景として生まれたものです。
1975年のパゴダリングなど、ジャンマリアによるジュエリーは当時のカラフルで陽気なスタイルを完璧に体現しています。鮮やかな色彩が目を引く大ぶりなインペリアルトパーズ(25.0ct)が、84個のブリリアントカットダイヤモンド(4.1ct)によって際立っています。イエローゴールドのレース編みのケージの中に閉じ込められているように見えるデザインです。
ジャンマリアの息子アンドレアは、チュールの幻想的な幾何学模様により惹かれました。2015年のムゾーネリングは、複数の葉があしらわれその個性を際立たせています。
カクテル イヤリングの制作は、まず石選びから始まります。ジェムストーンは身につける人の美しさと個性を引き立てるため、細部まで厳選したものが取り付けられます。
ジャンマリア・ブチェラッティがデザインしたペンダントイヤリング(1987年)プライベートコレクション
1929年にスペインのソプラノ歌手コンチータ・スーパーヴィアが購入したマリオ・ブチェラッティのオープンワークペンダントや、フェデリコ・ブチェラッティによる1973年デザインのバロックパールとゴールドの葉があしらわれたペンダントなど、ブチェラッティの作品の多様性は他メゾンと比べ一線を画しています。
アメジスト、ホワイトパール、トルマリン、ベリル、ルビー、サファイアが、様々なカットとシェイプ、色で組み合わされています。ジャンマリア・ブチェラッティはメゾンのアメリカ進出を祝してコレクション全体をデザインし、無限に湧き出る創造性を世界に示しました。
2008年にジャンマリアがデザインしたこのドロップイヤリングは、ホワイトゴールドの葉にダイヤモンドをあしらい、上品な輝きを放つドロップパールを華やかに縁取っています。
ジャンマリアの息子アンドレアはこのカクテルイヤリングを新解釈しました。ドロップ型のパステルピンクのベリルを幾何学的な形状のローズゴールドとホワイトゴールドで包み込み、ダイヤモンドをあしらった気品あるデザインに仕立てました。
100年以上もの間、ブチェラッティ・ファミリーにとって自然は不変のインスピレーション源でした。
アンドレアが2020年にデザインしたフローラルセットを身に纏ったルクレツィア・ブチェッラッティ。「ブチェラッティの庭」コレクション
自然に対する飽くなき探求心は、一族の好奇心と想像力を駆り立てます。一族が自然からインスピレーションを得て制作した作品は、多岐に渡ります。
ベゴニアやクリスパの花は、ジャンマリアの創作にインスピレーションを与え続けています。繊細なフリルのような花びらには「リガート」と「セグリナート」と呼ばれるエングレービングが施されています。異なる色調のゴールドを使用し、エンボス加工によって本物のように生命力のあるシルエットが生まれました。雄しべ部分にはダイヤモンドがあしらわれています。
植物の世界と共存する虫たちの体には、独特な形のバロックパールが使われ乳白色の光沢を放ちます。パールの不揃いの形にインスピレーションを得たマリオは、ダイヤモンドをあしらったイエローゴールドとシルバーのトンボ型ブローチを制作しました。細長い羽には琵琶パールがあしらわれています。その後、ジャンマリアは2000年代初頭にアニマル コレクションをデザインし、このコレクションでは神話上の生き物や動物たちをブローチとして転生させました。
ジャンマリアは、メゾンを象徴するコレクションのひとつを、愛娘のマリア・クリスティーナに捧げました。
エングレービングのテクニックが際立つマクリ コレクションのバングルブレスレット。イコナ コレクション
マリア・クリスティーナから名付けられたマクリ コレクションでは、エングレービング技法「リガート」の真骨頂を見ることができます。
このコレクションは、ブチェラッティの典型である2トーンのゴールドが際立つ星形のダイヤモンドロゼット「キアロスクーロ」が特徴です。
ùアンドレアは「リガート」のシルクのような質感が特徴のマクリ ジーリオのラインを手がけました。ダイヤモンドの光を浴びた小さなユリの花を加えることで、マットな質感に遊び心を加えました。マクリカラー コレクションでは、アクアマリン、アメジスト、ルビーの色彩美が、繊細なエングレービングが施されたゴールドと組み合わされています。
マクリは1980年代から現在に至るまでメゾンで最も人気を博すコレクションであり、控えめな優美さ、そして真っ直ぐなミラネーゼらしさの象徴的存在となっています。
ハワイ コレクションは、創業者マリオ・ブチェラッティにより1930年代に誕生しました。
パールをあしらったネックレスのディテール。チェーンは、ひし形模様の上にエングレービング「リガート」が施されています。
未来派芸術の速度と動きに影響を受けたマリオは、手で拗られた金のワイヤーで小さなサークルを作り、それを絡めて長いチェーンを作るというアイデアを思いついたのです。このデザインは、その驚くべきモダンさから当時センセーションを巻き起こし、今日に至るまで高く評価・認知されています。
1990年代に入ると、アンドレアは多様な新作を発表。さまざまなレングスを試しながらバリエーション豊かなコレクションを世に送り出しました。今日のハワイカラーコレクションでは、オパール、翡翠、オニキス、カルセドニーなどのカラーストーンが使われ、豊かなカラーバリエーションが特徴となっています。ダイヤモンドをあしらい、貴重なホワイトゴールドのサークルを加えたハワイダイヤモンドも仲間に加わりました。
また、エトワレ コレクションもアンドレアの創造性を感じられるコレクションです。4本のゴールドのチェーンが絡み合って生まれたスペースに、可憐なダイヤモンドの百合の花が咲いています。優れた技巧と想像性が、チェーンを単なる物体から華やかな装飾品へと変貌させたのです。
イタリアのルネサンスにインスピレーションを得たオペラは、メゾンの創造性の象徴です。シンメトリーな美しさへのオマージュとも言えるコレクションです。
アンドレア・ブチェラッティがデザインしたブローチペンダント(2018年)中央のブチェラッティカット・ダイヤモンドの美しさが際立っています。ブチェラッティカット コレクション
2014年にアンドレアによって発表されたブチェラッティの新しいロゴは、ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿のファサードをモチーフとしたものです。繊細に装飾された4つ葉の透かし彫りが特徴で、アイコニックなチュールのディテールはコレクションにさらなる軽やかさと透明感を与えています。
メゾンのアニバーサリーを記念して2019年に発表したブチェラッティカット・ダイヤモンド コレクションの主役は花でした。アンドレアは、ブチェラッティの100年の歴史の到達点として、調和と幾何学性を強調する新しいダイヤモンドカットを生み出しました。長年の研究と調査の末生まれた57のファセットを持つブチェラッティカットは、米国のGIAによる公式認定を受けています。
メゾンの現在を表すこのコラムは、ブチェラッティらしさの原点と未来へのオマージュです。伝統を重んじながら現代性を加えて再解釈することで、時代を超越した美を表現しています。